2011年7月13日水曜日

走馬灯のような写真



―集英社「いつも上天気」より


かすかに覚えている
ママがいてパパがいて

青空の下に大きな山

白い富士山によく似た山

まわりはポテト畑が広がってて

大きな虹

空からの大きな虹を
みんなでみてた

あれは…
どこだったんだろう…

あの場所は




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忘れられないワンシーンがある。

売れない画家の父と人気小説家の母を
両親に持つ小学生の女の子、宝。

「パパは今家にはいない」

そんな宝が先生に呼び出され説教を受けるシーンで
幸せだった頃の微かな記憶を語り出す。

あれはどこだったんだろう…と宝がつぶやき
幼い私の目の前に雄大な風景が広がった。

そして偶然廊下で会話を聞いていた
宝の初恋の男の子が心の中でつぶやく。

「それは…オレゴンです」

世界中の行きたい場所はそんな風に私の中に刻まれていった。

ひとつの絵やひとつの言葉から
風を感じ、音を感じ、巡る風景を感じられる
走馬灯のような写真が撮れたらいいなと思う。

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